こんにちは!は〜み〜です。
今回は、都市開発に関する【映画】を紹介したいと思います!
第1弾は、『ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命』です!↓↓↓
ジェイン・ジェイコブズについて
皆さんはジェイン・ジェイコブズを知っていますか?
建築系の学生の皆さんは、一度は聞いたことがあるのではと思います。
彼女の著書『アメリカ大都市の死と生』↓↓↓は、都市計画論の教科書と言っても良いほど有名な名著です。
今回紹介する映画は、ジェイコブズの都市計画に関する考え方について、対極に位置するロバート・モーゼスとの対比によってコンセプチュアルに映像化した作品となっています。
私自身、ジェイコブズ自体はもちろん知っていて、『アメリカ大都市の死と生』も学生時代に一度読んだことがありますが、正直、何がすごいのかについてはいまいちわかっていませんでした。。
実務経験を経たこともありますが、この映画によってかなり理解が深まったと思います。
都市系の学生さんには(もちろんそれ以外の皆さんにも!)是非観ていただきたい内容です。
さっそく紹介していきますね!
映画『ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命』の概要
この映画は、
NY 都市開発の帝王ロバート・モーゼスが推し進める”自動車中心”の都市開発に対し、
”人中心”の都市のあり方を提唱するジェイン・ジェイコブズの
壮絶な対立の歴史を描いたドキュメンタリー映画
です。
ドキュメンタリーなので、SFなどの映画のような映像・ストーリー的感動は少ないですが笑、公営住宅の爆破解体映像やモーゼス、ジェイコブズの肉声など、生々しいものも含む貴重な内容で構成されています。
最初に知っておいてほしいのは、この2人、
どちらも都市計画の専門家ではない!
ということです。
都市の専門家ではない人が都市論の教科書に出てくる、というのも、都市の複雑さゆえなのでしょうか?
2人がどのように都市と向き合い、どのように行動したのか、この映画を見ると大変よくわかります。
ロバート・モーゼスの考え方
映画はモーゼスパートとジェイコブズパートが交互に展開していきますが、最初に、モーゼスの都市に関する考え方を以下に示します。
モーゼスは、1920年代に、アメリカの公共事業を実務として主導した人です。主要な広域高速道路や巨大公立公園はすべてモーゼスが整備した、と言っても過言ではないほど、当時の巨大国家の都市インフラ整備を爆進的に勧めた人です。
公共事業の推進主体ですので、いわゆる”公務員”ですが、現在の日本でイメージする公務員とは全く違うイメージです笑
彼の元々の人となりもあるのでしょうが、とにかく強硬・強引な思想の持ち主で、
- 道路至上主義。自動車の交通利便が都市を発展させるという考え方
- スラムはガン細胞。貧困層はダウンタウンに公営住宅を作って押し込める
- コミュニティは不要。団地には最低限の住居と娯楽施設、駐車場があればよい
といった具合に、スラム街を狙って高速道路を通し、強制退去させた住民はダウンタウンの劣悪団地に追いやる、という強引なやり方で都市開発を進めました。
当時の社会事情がそうさせたこともあると思いますが、とにかく都市インフラの整備のために邪魔なものは排除する、という都市開発の進め方をしていました。
ジェイン・ジェイコブズの考え方
一方のジェイコブズは、いわばモーゼスの対極です。
ジェイコブズは元々ジャーナリストで、都市や建築に関しては素人でしたが、観察力に優れた人物で、都市で活動する”人”に着目した観点で都市のあり方を見ていました。
彼女の考え方はこうです。
- 人が街をつくる。車のための空間ではない
- 多様性が重要。色んな人が支え合っているつながり・コミュニティこそが必要
- 機能は分離するのではなく、様々な機能が複雑に関係していることが都市の活力
彼女はモーゼスのような都市開発を、都市の再生ではなく”破壊”だと痛烈に批判しています。
2人の戦い
モーゼスとジェイコブズは、激しい抗争を繰り広げます。
この映画では、いくつかの対立案件とその一部始終がまとめられています。
ワシントン広場公園の道路貫通計画
ジェイコブズが声を上げる原点になった案件です。
モーゼス側の公園を道路で分断する計画に対して、ジェイコブズは、街が分断されるとして猛抗議します。
ジェイコブズはジャーナリストの出でもあったためか情操戦略に長けており、地元の主婦から政治家まで多くの味方をつけ、最終的に道路計画は中止となります。
これはモーゼスにとっても初めての計画頓挫となりました。
この勝利からほどなくして、ジェイコブズは『アメリカ大都市の死と生』を出版することになります。
グリニッジ・ビレッジの再開発計画
ここはジェイコブズが実際に生活している街でした。
モーゼスがこの地区をスラム指定候補にしたことが発端となっています。ジェイコブズへの恨みもあったのでしょうか、、そうだとすれば公私混同にも見えますね。
ジェイコブズはここでも躍進し、最終的に市長に訴訟を起こしてスラム指定を退けます。
なお、この映画のジャケットに映っている×のついたサングラスは、このときの反対集会のときの様子を映しています。
ローワー・マンハッタン高速道路計画
大激震&決着の案件です。
構図はワシントン広場公園のときと同じですが、反対運動の最中、ジェイコブズが逮捕されます。
この一件が社会に大きなウェーブを起こしました。
ジェイコブズは英雄化され、政治家の見方が変わり、この計画は白紙撤回に至ります。
さらに、ロックフェラー市長のもと、モーゼスは退任に追い込まれます。
これ以降、モーゼスが推し進めてきた自動車中心の都市計画の見直しの動きが全米へ波及していきます。
エピローグ
映画の終盤では、現代の中国で同じ歴史を繰り返している、あるいは当時のアメリカよりひどい、と批判的に紹介されています。
そして最後は、ジェイコブズの著書の引用から、”都市には複雑な秩序がある”という言葉で締めくくられます。
「どっちが正解?」問題
さて、対極的な2人の考え方がよくわかったところで、やはり議論になるのが、「どっちが正解?」問題です。
結論から言うと、私は
「どっちもわかった上で計画に励む」
が正解だと思っています。
もう少し噛み砕くと、
「モーゼスの考え方に行きがちだけど、
ジェイコブズの考え方も踏まえた最適解を計画しよう」
です。
よく、都市計画を仕事にしている人たちは、都市を上から俯瞰して見ています。
机上に地図を置き、地図上に線を引いて設計する。
これは、極論するとモーゼス寄りのプロセスです。下図はあるけど、一から作る系の計画ですね。
都市計画道路の線などはこういうイメージがあるのではないでしょうか?
また、建築系の学生さんであれば、設計演習などで一度は経験がありませんか?
敷地内にある既存の地形地物を無視して新しい建築を好き勝手に描いてしまうやつ。
まさにこれですね。(私もよく土地のコンテクストを読み取りなさい!などと怒られました。。)
ただ、
- そういったコンテクストを排除したほうがシンプルで明確なものができる
- 複雑なコンテクストを一定無視しないと物事が進まない
という場面も、現実問題としてありますよね。(実務では特に)
なので、実際に街を分断するような都市計画道路の線が描かれ、住宅地のすぐ隣に高層ビルが建つようなことが起こります。
これらをモーゼスのように非人道的だと完全否定することは難しいです。
最適解の一つとしてその形になっていると、私はそう認識します。(実際に現職でもやっていますし。。)
ジェイコブズの考え方には超納得の部分も多々ありますが、現実的な話としてこの資本主義経済の都市開発において、その理想を100%実現するのは難しい。
コミュニティが必要なように、道路だって必要な都市の要素です。
なので、
どっちの視点も認識した上で最適解を計画する
これが大事、むしろこれしかないんだろうと思います。
ジェイコブズの偉業は、ジェイコブズのような視点があることを気づかせてくれたことにあると、私はそう思っています。
まとめ
今回は、映画『ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命』↓↓↓について、私の私見も含めて紹介しました。
まとめると、
- モーゼスは公務員で”自動車中心”の都市開発を推進
- ジェイコブズは一般市民で”人中心”の都市のあるべき姿を主張
- 2人は対立し、最終的にモーゼスが敗北
- ジェイコブズはすごいけど、モーゼスもジェイコブズどちらも理解しよう!
いかがだったでしょうか?参考になれば嬉しいです。
また、気になった人は是非映画も見てみてくださいね〜!
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