【容積緩和】について解説!

仕組み・制度

こんにちは!は〜み〜です。

過去の記事で【都市開発諸制度】について解説しました。

ざっくり言うと、

「都市に不足する空地と儲けを生み出す床を同時につくるWin-Winの仕組み」

と解説しました。

そして、都市開発諸制度の肝になるのが「容積緩和」です。

今回は、なぜ容積緩和が必要なのか、なぜ容積緩和がそれほど重要なのか、について解説していきたいと思います。

デベロッパーの視点「床がたくさんほしい」

まず、デベロッパーになったつもりで考えてみましょう。

※デベロッパーとは、ここではざっくり土地や建物といった不動産でお金稼ぎしている人たち、という程度で大丈夫です

あなたはデベロッパーで、駅近に5,000m2の土地を持っている(商業地域、基準容積率600%)、としましょう。

まず、この土地で最大限儲けるために、儲かる建物を建てたいと思います。

儲けるには、建てて売るか貸すかはありますが、共通して「できるだけ大きい床面積を取りたい」ということになります。

(※儲けを出すには、「安く作る」という要素もありますし、整形かどうかなど売りやすい・貸しやすい床の要素などもありますが、ここでは容積緩和に話題を絞るために単純化しています)

そこで目の前に立ちはだかるのが「容積率」です。

容積率の壁、突破したい、、

建物を建てるには、建築基準法を守る必要があります。

あなたが持っている5,000m2の土地に建物を建てようと思うと、商業地域の容積率規定から、容積率600%、すなわち30,000m2が床面積の上限となります。

(※角地緩和、防火地域など色んな要素は端折っています)

一旦、一番儲かりそうな用途がオフィスであると仮定して、オフィスを作る前提としましょう。そして、実際まわりのオフィスビルが結構儲かっているとします。

すると、「オフィスあればあるだけ儲かりそうだな。もう少し床面積取れないかなー」すなわち「容積率の上限を突破できないかなー」となるわけです。

行政の視点「公共施設を整備したい」

次に、行政の視点で見てみましょう。

行政は、都市計画法等に基づいて都市の将来像を描き、市民の税金を使って市民のためのまちづくりを推進する立場です。

広いものでは、都市計画マスタープラン(都心マス、まちマスなどと通称されます)、より具体的なものでは、用途地域、都市計画道路などを定め、こうした上位にある方針や計画(業界では「上位計画」と呼びます)に基づき、公共施設整備や民間開発の誘導を行います。

例えば、道路を拡幅する、公園を作る、駅前広場を拡張する、というのが公共施設整備です。(それを都市計画法に基づいて計画的に整備するものと定めたものが都市計画道路や都市計画公園です)

民間開発の誘導は、用途地域が一番わかりやすいかと思いますが、例えば駅前に商業機能を誘導して(高容積率、高建ぺい率を定め、不動産事業がしやすいようにする)、郊外に住宅を誘導する(工場など住環境を阻害する用途が建たないように用途や高さ等の制限を定める)などのイメージです。

今回対象とする土地にフォーカスすると、用途地域で商業地域・容積率600%が定められていますね。これは行政によって容積600%程度の商業活動が誘導されている土地だ、ということになります。

デベロッパーと行政のWIN-WIN

デベロッパーと行政、両者の立場や考え方を理解したところで、あなたの土地に戻ってイメージしてみましょう。

イメージしやすくするために、

  • あなたの土地が駅の目の前にある(よって駅前に広場空間がない)
  • にぎわいや環境防災の観点から、駅前に広場空間がほしいと市民から要望が出ている

という状況だと仮定してみます。

あなたは、駅前の一等地は当然儲かるので、床をたくさん作って稼ぎたい

行政は、地域の課題解決のために、駅前に広場を作りたい。(でも駅前がちょうど民間の土地なんだよなぁ。財源も厳しいし、収用なんてできない)

普通に考えると、あなたは容積率600%のビルを建て(例えば1階が商業、上がオフィスとかの雑居ビル)、駅前に広場が作られることはありません。

では、行政からこういう提案があったらどうでしょうか?

「あなたの土地の1階部分に広場を作ってくれたら、容積率を200%あげます

あなたは考えます。

1階は人通りがあり一番儲かるところなので、本当は商業テナントに高く貸したい。でも、そこを広場にすると200%分上層階のオフィスを増やせるので、もしかするとそっちの方が儲かるかもしれない。。しかも駅前がよくなれば人も増えてもっと儲かるかも。。

WIN-WINの構図が見えたでしょうか?これが容積緩和の威力です。

(※容積緩和すると建物は高くなる方向なので、一般的には高さ制限などの形態規制も一緒に緩和されます。当然、細かくはもっと色んな規定により制度化されています)

まとめ

まとめます。

  • デベロッパーは床がほしい
  • 行政は公共施設を整備したい
  • 容積緩和により、両者の望みを両方叶えることができる

容積緩和について、少しは理解が深まったでしょうか?

都市開発諸制度がWIN-WINの構図になっていることに、容積緩和が果たす役割がなんとなくイメージできれば幸いです。

ただし留意点が一つ。容積緩和を肝とした仕組みが成立するのは現時点では都心あるいは駅前だけです。

地方都市になると、床を作っても売れない貸せない(=儲からない)エリアが出てくるので、デベロッパーのメリットが薄く、三方良しが成立しないことが多々あります。

今後のシュリンク日本を考えると、むしろ地方のソリューションの方が重要かもしれません。

難しい課題ですが、皆さんも考えてみてください。

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